和解条項

 原告ら及び被告らは、本件について当裁判所が平成七年一〇月六日に示した「和解勧告に当たっての所見」(別紙1)及び平成八年三月七日に示した「第二次和解案提示に当たっての所見」(別紙2)を前提として、以下の内容により、本件を和解によって解決することを合意した。

 

一 被告国並びに被告株式会社ミドリ十字、同バクスター株式会社、同日本臓器製薬株式会社、同バイエル薬品株式会社及び同財団法人化学及血清療法研究所(以上五社を総称して、以下「被告製薬会社」という。)は、原告らが本件非加熱濃縮製剤の使用によるHIV感染により被った損害を填補するため、連帯して、別紙3一欄表の原告欄記載の各原告に対し、対応する和解一時金欄記載の金員の支払い義務があることを認める。

 

二 被告国及び被告製薬会社は、連携して、右一覧表原告欄記載の各原告に対し、弁護士費用及び訴訟追行費用として、対応する弁護士費用等欄記載の金員の支払い義務があることを認める。

 

三 被告国は、第一、第二項の金員(以下「本件和解金」という。)のうち右一覧表の甲欄記載の金員を、平成八年五月末日限り、右原告ら訴訟代理人弁護士の指定する銀行口座に送金して支払う。

 

四 被告製薬会社は、本件和解金のうち右一覧表の乙欄記載の被告製薬会社負担分の支払いに充てるため、連帯して、平成八年五月末日限り、金十五億円を限度として、財団法人友愛福祉財団(以下「友愛福祉財団」という。)に拠出し(被告日本臓器製薬株式会社など血液製剤の輸入販売者たる被告製薬会社の拠出金には、その輸入販売した本件非加熱濃縮製剤の製造者が本来製造者としての責任に基づいて負担すべき部分を含む。)、原告らは、別に定める友愛福祉財団との協定に基づき、友愛福祉財団から、被告製薬会社の和解金の支払いを受けるものとする。

 

五 被告国及び被告製薬会社は、本和解成立後、本件非加熱濃縮製剤の使用によるHIV感染者(二次・三次感染者を含む。)であってエイズを発症している原告らに対し発症者健康管理手当(仮称)を支給する事業を共同して実現するものとする。その歳、被告国は、財政法の枠内で措置するものとする。

 

六 原告らは被告らに対するその余の請求を放棄する。

 

七−1 原告らは、本和解条項による以外、本件に関し、被告らに対して何らかの請求をしない。

2(一) 原告らは、被告株式会社ミドリ十字に対して本件非加熱濃縮製剤又はその原料血漿を提供したアルファ・テラピュイティック・コーポレーションに対しても本件に関し何らの請求をしない。

(二) 原告らは、被告バクスター株式会社の輸入販売にかかわる本件非加熱濃縮製剤の製造又は輸入に携わったバクスター・インターナショナル・インク、バクスター・ワールド・トレード・コーポレーション、バクスター・ヘルスケア・コーポレーション、バクスター・エクスポート・コーポレーションに対しても本件に関し何らの請求をしない。

(三) 原告らは、被告バイエル薬品株式会社に本非加熱濃縮製剤を提供した米国ペンシルバニア州ピッツバーグ所在バイエル・コーポレーションに対しても本件に関して何らの請求をしない。

(四) 原告らは、被告日本臓器製薬株式会社に対して本件非加熱濃縮製剤を供給したオーストリア共和国ウィーン、一二二〇、インダストリストラセ七二所在イムノ・アーゲー、同社に対して原料血漿を供給したオーストリア所在オーステエーストライヒシエス・インステイチュート・フュール・ヘモデリバテ・ジーエムビーエイチ、米国所在コミュニティ・バイオ・リソーシス・インク及び米国所在イムノ・ユー・エス・インクに対しても本件に関し何らの請求をしない。

 

八 訴訟費用は各自の負担とする。

 


確認書

 

 平成八年三月二九日、東京地方裁判所において、株式会社ミドリ十字、バクスター株式会社、日本臓器製薬株式会社、バイエル薬品株式会社又は財団法人化学及血清療法研究所(右五社を総称して、以下「製薬会社」という。)の製造もしくは輸入販売に関わる非加熱濃縮製剤(以下「本件非加熱濃縮製剤」という。)の使用によりHIV感染の被害を受けた血友病患者又はその遺族である原告ら(以下「本件原告ら」という。)と製薬会社及び国との間に、別紙1和解条項(以下「本件和解条項」という。)による裁判上の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。

 本件原告ら及び未結審原告ら、厚生大臣並びに製薬会社は、本件和解及びその前提とされた裁判所の平成七年一〇月六日付けの各所見に基づき、本件非加熱濃縮製剤の使用によりHIV感染被害を受けたすべての血友病患者及びその遺族が被った物心両面にわたる甚大な被害を救済するため、次の通り合意に達したことを確認する。

 

一 誓約

 

1 厚生大臣及び製薬会社は、本件について裁判所が示した前記各所見の内容を真摯かつ厳粛に受けとめ、我が国における血友病患者のHIV感染という悲惨な被害を拡大させたことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省して、原告らを含む感染被害者に物心両面にわたり甚大な被害を被らせるに至ったことにつき、深く衷心よりお詫びする。

 

2 厚生大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、前後二回にわたり、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、再び本件のような医薬品による悲惨な被害を発生させるに至ったことを深く反省し、その原因についての真相の究明に一層努めるとともに、安全かつ有効な医薬品を国民に供給し、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く認識し、薬事法上医薬品の安全性確保のため厚生大臣に付与された各種権限を十分活用して、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを改めて確約する。

 

3 製薬会社は、安全な医薬品を消費者に提供する義務があることを改めて深く自覚し、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを確約する。

 

二 本件和解の対象者

 本件和解は、第四次訴訟までの原告らを対象とする。

 

三 本件和解の和解金

 本件和解金条項のとおり

 

四 健康管理費用

 国は、本件和解成立後も、「エイズ発症予防に資するための血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業実施要領」に基づくエイズ発症前の感染者に対する健康管理費用の給付の継続・拡充に努める。

 

五 発症者健康管理手当(仮称)

 

1 国は、平成八年度において、財団法人友愛福祉財団(以下「友愛福祉財団」という。)が、本件非加熱濃縮製剤の使用によるHIV感染者(二次・三次感染者を含む。)であってエイズを発症している本件原告らに対し、一人当たり月額一五万円の発症者健康管理手当(仮称)(以下「発症者手当」という。)を支給する事業を行うに当たっては、本件和解条項第五項を受けて、その実施に要する費用の四割を支給する。

 国は、平成九年度以降においても、右支弁の実施に努めるものとする。

 

2 製薬会社は、本件原告らのうちエイズを発症している者に対し、その生存中、1に定める事業の実施に要する費用の六割を第六項の方法により支払う。

 

3 本件原告らのうち本件和解成立後にエイズを発症したものについても、前1、2と同様とする。

 

六 製薬会社の金銭給付の履行

 製薬会社の本件和解条項及びこの確認書に基づく金銭給付の履行については、製薬会社が、連帯して、必要な資金を資金を友愛福祉財団に拠出し、原告らに対しては、友愛福祉財団が右拠出金の中から支払いを行うものとする。金銭給付の具体的な支払い方法については、別紙2「覚書」及び別紙3「協定書」のとおりとする。

 

七 友愛福祉財団による救済事業について

1 友愛福祉財団による救済事業は、当分の間存続させるものとするが、平成一三年三月を目処として廃止する方向で検討する。

 

2 製薬会社は右救済事業の実施に要する費用のうち六割を負担する。

 

3 国は、平成八年度において、右救済事業の実施に要する費用のうち四割を支弁する。平成九年度以降においても、右支弁の実施につとめるものとする。

 

4 本件和解成立後(平成八年四月一日以降)の請求に基づいて右救済事業による給付を受けた分については、その全額を損益総裁の対象として、当該感染者又は遺族が和解に基づいて支払いを受けるべき和解金(基本額)から控除するものとする。

 

5 月を単位として給付される給付金については、平成八年三月までの月分を本件和解成立時(平成八年三月二九日)までに給付されたものとみなす。

 

6 5に規定する給付金以外の給付金については、平成八年三月末日までの請求にかかるものを本件和解成立時(平成八年三月二九日)までに給付されたものとみなす。

 

八 その他の恒久対策について

 

1 厚生大臣は、引き続き原告らHIV感染者の意見を聴取しつつ、HIV感染症の医療体制の整備等につき適切な措置をとることに努める。

 

2 HIV感染症の研究治療センターの設置、拠点病院の整備充実、差額ベッドの解消、二次・三次感染者の医療費、HIV感染者の身体障害者認定等の、HIV感染症の医療体制及びこれに関連する問題については、厚生省において、原告らHIV感染者と協議する場を設ける。

 

3 製薬会社においても、治療薬の開発、情報の提供等、原告らHIV感染者の治療の向上等に努めるものとする。

 

九 未結審原告ら及び未提訴者の取り扱い

 

1 第五次以降第八次訴訟までの既提訴原告らについては、本件和解成立後速やかに、本件非加熱濃縮製剤の使用による感染の事実(二次・三次感染者についてはその感染原因)についての証拠調べを実施した上、順次和解の対象とする。

 

2 未提訴の血友病患者であるHIV感染者及びその遺族については、訴え提起を待ち、本件非加熱濃縮製剤の使用によるHIV感染の事実(二次・三次感染者についてはその感染原因)についての証拠調べを実施した上、順次和解の対象とする。

 

3 未結審原告ら及び未提訴者についての和解の内容は、本件和解に準拠するものとする。但し、弁護士費用・訴訟追行費用については、次のとおりとする。

 

(一) 第五次及び第六次訴訟の原告らについては、HIV感染者(二次・三次感染者、エイズ発症者。死亡者を含む。)一人当たり金三五〇万円とする。

 

(二) 第七次訴訟以降の原告らについては、HIV感染者(二次・三次、エイズ発症者、死亡者を含む。)一人当たり金一五〇万円とする。

 

4 今後和解が成立するHIV感染者のうち、当該和解成立時に既にエイズを発症しているものについては、平成八年四月、訴え提起、発症の最も遅い時点に請求があったものとして、発症者手当の支給を受けられるものとする。

 


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