「薬害ヤコブ訴訟」の和解は「薬害エイズ」とどこが違うのか

 

 ほとんど変わらない。私の目には全く同じように映る。国の姿勢が、だ。

 今年3月25日、東京・大津両地裁で行われてきた「薬害ヤコブ訴訟」の和解確認書の調印式が厚生労働省で行われた。

 2人の原告団団長は口こもごもに「大臣の心からの言葉を謝罪と受け止め、励ましと明日への希望としていきたい」「本当に二度と薬害の起きないようにしてください」と語った。

 薬害エイズ訴訟が和解で終結してからちょうど6年目のことだ。

 クロイツフェルト・ヤコブ病は脳が萎縮し,急速に痴ほうが進行して通常は1、2年で死に至る病だ。

 人間の脳組織から作られた「ヒト乾燥硬膜」の移植を受けた人たちが同じ症状を発症した。

 この硬膜が汚染されている可能性を厚生省は知りながら放置し、感染被害者を増やしたために「薬害ヤコブ病」といわれる。これまでに76人の被害者が確認されている。

 国と硬膜を製造・販売した独会社を相手に訴訟が始まったのは96年。

 その後、東京地裁でも提訴がなされ、計20人の被害者が裁判を起こした。

 裁判の審理中、国が責任を終始、認めなかったのは薬害エイズ訴訟と同様だ。ここでも裁判所が勧告を出し、和解による決着を促した。

 結局、坂口大臣が政治的な判断に基づいて和解することを決めたのも、菅大臣の時と同じ。

 和解確認書で約束されたのも、「原因解明の追求」「安全性に関する情報収集体制の強化」と「薬害再発防止に最善を尽くすこと」など、薬害エイズの時とほとんど変わらない。

 これは問題ではないだろうか。6年たって同じことを約束している厚生労働省とは一体何なのか。

 この6年間、何をしていたというのか?

 そのポイントは「謝罪」にあると思う。

 菅に坂口、大臣はそれぞれ口頭で(時には泣きながら)"謝罪"しながら、和解成立の際取り交わした確認書には、その二文字が入らず、「お詫び」でお茶を濁している。

 厚生省は本心から謝っていないのだ。

 この“伝統”は、整腸剤キノホルムを服用した人が視覚障害や下半身の痺れを起こした「薬害スモン」(77年和解)でも見られた。

 東京地裁でまとまった和解条項では、国は「行政の立場から深く反省」し、製薬会社は「心から陳謝」することになっている。

 その結果が、薬害エイズであり、薬害ヤコブだ。「二度と薬害が起きない。救済も完全になされる」なんて、誰が信じられるだろうか。

 今年2人の原告団長が流した涙を無駄にしないために、厚生労働省の監視を怠るわけには行かない。

山の手の会会員:「山の手通信」平成14年5月号掲載より

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