
この裁判は、85年の8月に安全な加熱製剤が出ているにもかかわらず、危険な非加熱製剤の回収措置をとらなかった社長の責任を問う裁判です。
しかも偶然が重なった結果の判決です。原告は血液製剤を必ずしも必要としない肝臓病患者でたまたま几帳面な人で治療に使われていた薬を全てメモしていたことが今回の判決に繋がったのです。
その上、病院が患者のカルテを開示する条件として病院に対して訴訟を起こさない条件付きで。偶然が重ならなければ裁かれることはなかったのです。
4年前の和解で企業の責任は問われ、いまはミドリ十字と言う製薬企業はありません。
企業の最高責任者として非加熱製剤の回収命令を出さなかった社長の責任は当然問われるべきだと思います。業務上過失致死では刑が軽すぎます。
1800人の感染者、540人にも及ぶ死亡者、そしていまもHIVで苦しみ続ける人達がいます。ここで、社長が裁かれなければ、企業として判断すれば、次の社長に引き継げば引責は問われない、自分のいる間利益が上がれば問題ない、また同じ悲劇が繰り返されると思います。
本当のところ、私が問題にしたいのは85年7月以前に非加熱製剤の危険性をミドリ十字の社長が認識していたことです。このことが裁かれなければ薬害再発防止にはならないと思います。本来は非加熱製剤の危険性認識で裁判すべき問題だと思います。
はっきり危険と分からなければ。証拠がなければ。前例がなければ。罰せられなけば。
非加熱製剤の危険性は3人の社長以外にも知っていた人達はいると思います。
あるTV番組で元ミドリ十字の社員に非加熱製剤の危険性についてアンケートしたところ、ほとんど回答が戻って来なかったそうです。非加熱製剤の危険性を知っていた全ての人達に対して責任を取れとは思っていませんが、危険性を認識できた人達は改めて薬害再発防止について考えてほしいのです。
原告:「山の手通信」平成12年3月号掲載より